マーケティング本

4つのブランドを立て直した 八方塞がりを打破するマーケティング

「4つのブランドを立て直した 八方塞がりを打破するマーケティング」の著者は、欧州系ラクジュアリーブランドの社長を歴任した、高倉豊氏。

高倉氏は、ジバンシーの化粧品部門を日本で躍進させた人物としても知られる。その秘密は、当時女性が買うもの出会った口紅を男性から女性へのギフト商品として再定義し、全く新しい口紅としてのポジショニングをしたこと。これにより、当時無名であったジバンシーの化粧品が日本の大手百貨店に取り扱われるきっかけを作った。

これだけでなく高倉氏は、危機的な状況を外資系日本支社長として次々に打破していった経験を持つカリスママーケターだ。

その高倉氏は、八方塞がりを以下のように定義している。

・ 商品力がない
・ 時間がない
・ お金がない
・ 知名度がない
・ 強豪が多い
・ マーケットがない
・ 売る気がない
・ 失敗続き

こんな八方塞がりはないだろうというくらい八方塞がりであるが、これに加えて、高倉氏の状況はもっと悪いのではないかと感じる。以下は、本の内容も踏まえて私の推測も含め体験であるが、

商品自体には手を付けられない
というのも、高倉氏は社長を歴任しているが、あくまでも外資系企業の支社長。つまり、肝心の商品には手を付けられない。外資系日本支社と言うのは、海外で企画したものを日本で販売してほしいという立場である。商品が日本向けにフィットしてなくても作り直してくれと言うのは非常に難しい立場なのだ。

上司は外国人
外資系企業であるから、もちろん上司は本国にいる外国人。つまり、日本市場についてすごく理解があるというわけでもなく、日本にいるわけでもないのでどうのこうのと言ってもしょうがないのである。自身で道を切り開いていかなくてはいけない立場である。

基本的な資源は本社が決めている
売上目標やそれにまつわる人員計画など、日本側で決められる部分ももちろんあると思うが、本丸の経営企画は本国(本社)にあるということだ。つまり、本社から落ちてきた目標とリソース(人員数、広告予算)などで運営しないといけないのである。

私が想像するに、
「本国ではそれなりに有名でブランド力もある、ただし、日本では無名で、また、日本人から見るとにもそんなに商品力がない。国内のブランドも大規模なマーケティングと広範囲な商品群を要している。外資系ブランドもすでにかなり展開しているので、外資系といってもそれだけでは日本では差別化が難しく、今まで本国の指示通りやってきてもなかなか成功することはなかった。すでに、かなり士気が落ちていてあまりやる気が無い店員(営業)も多い、その上、現状を正直に行っても本国の本社の方に説明しても伝われない。なぜなら、あまりにも市場環境が違うから。販売実績も堅調ではないため、本国からの積極的な追加投資も受けられられない。さあどうしよう?」
という状況ではないかと思う。

中小の日本の外資系企業であればよくある光景と言ってもいい。通常であれば、受けなくても良い仕事を受けてしまった、誰がやっても無理、と言える状況であるが、ここを4社ともに日本支社長として突破したというのは、本当に「すごい」実績だ。

「4つのブランドを立て直した 八方塞がりを打破するマーケティング」中では、高倉氏が日本法人の社長を努めた、ジバンシー、イヴサンローラン、シスレーと言った外資系化粧品メーカーや高級時計メーカー、ウブロの実例をとって、ケーススタディーとしてさまざまなマーケティング手法を解説している。

著者が経験した様々なケースを通じて伝わってくることは、
・ 前提や前例を恐れずにチャレンジする
ということだろう。常に業界の前例、慣習、常識にとらわれずに使えるリソースを最大限に利用する方法を追求していった

この本は、特に外資系企業で働くマーケティング担当者に是非ともおすすめだ。また、大きな制約条件を持っているマーケター、そして、チャレンジャーとして市場を開拓していく必要があるマーケターにもおすすめだ。

最後に、著者である高倉豊氏も書いているが、「外資系企業の日本支社長として本社の言われた通りにやって失敗しても、結局責任は、自分がとることとなる」という認識は是非とも私達も持つべきだろう。つまり、上司に言われたとおりにやっても成功しないと意味ないのだ。つまり、そこで、本社(上司)とたとえ喧嘩しても、成功する方法を追求することが重要であるのだ。この精神は非常に重要あり、いうのは簡単であるがなかなかできないものである。

ちなみに、高倉氏には「口紅は男に売り込め!」という著書にある。この書名を見て、いかにもビジネス書っぽいとにかくキャッチーなタイトルをつけてしまえ戦略であると感じた人も多いだろう。しかし、それは大きく違う。なぜなら、これは比喩ではない。

高倉氏は実際に「口紅を男性に売り込み成功した」のだ。マーケティングの天才である。

■ 発売日
2013年初版。

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