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神秘的な企業:レッドブルの秘密に迫る - レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか

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レッドブルは謎に満ちた雰囲気がある。レッドブルは実にメディア露出が多い。F1でのレッドブルチームを初めとして、さまざまなエクストリームスポーツをサポート、そして、いろいろなイベントを開催している。

そして、もちろん、コンビニに行けば、レッドブル商品が陳列されている。そんなレッドブルであるが、企業戦略について語る機会が極めて少ない。つまり、レッドブル契約選手はメディアに露出し、自身のプレーするスポーツについては語る。しかし、レッドブル社の幹部が、レッドブルそのものマーケティング戦略や企業戦略がメディアで語られることは極めて少ない。

このギャップがレッドブルを極めて謎な存在にしていると言っても良い。

レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか」は、そのレッドブルの企業戦略についてメスを入れた企業研究本である。尚、本書を読めばわかるがレッドブルが公式にサポートした本ではない。様々なメディア露出やインタビューなどを通じて、筆者であるヴォルフガング・ヒュアヴェーガー氏が解き明かした本である。

この「レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか」を読めば、実は成功続きに思えるレッドブルもいろいろな商品で失敗していることもわかる。また、謎めいたレッドブルの創業者の一面にも触れることが出来る。

しかし、この本の一番見どころは、実は解説である。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(ICS)教授の楠木建氏が、この本を読んですぐに真似することは難しいなど、極めて当たり前なアドバイスを書いていることだ。例えば、レッドブルのマーケティングの多くのはレッドブルというブランドが持つコンテキストのみで有効であり、すべてのブランドに展開することができない点などだ。非常に良心的な解説である。もちろん、参考になる部分も解説している。つまり、この「レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか」は、楠木建氏の解説を読んでから(後ろから)読んだほうがいいかもしれない。

すぐにすべてが真似できないという部分を差し引いてもこの本はいろいろな気づきを与えてくれる。本書によると、レッドブル社は製造や販売においては他の企業と協業して行っている。つまり、レッドブル社はマーケティング組織なのである。

また、レッドブル社のユニークでアグレッシブで、画期的なマーケティングが出来る裏には上場していないことも影響していると語っている。上場していないことにより、投資家からの目を気にすることなくリスクを取る事ができるということだ。最近、CCC(カルチャーコンビニエンスクラブ、書店やレンタルCDのTSUTAYAの親会社)やアパレル最大手のワールドなど、文化的価値創造を目指している企業が非上場化に踏み切っている。

結論としては、レッドブルは画期的なマーケティングの裏では「稼いだお金を再投資に向けるといった姿勢」など、企業としては極めてまっとうであるということになる。まっとうな企業だからこそ、画期的な事ができるというわけだ。

この「レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか」によると、レッドブルの創業者、ディートリッヒ・マテシッツ氏が、レッドブル(的なドリンク)の可能性を見出すにきっかけの一つに、リポビタンDを販売する大正製薬の一族が日本の長者番付の上位にいることを雑誌を通して知ったことというのもあるそうだ。

つまり、日本からグローバルなエナジードリンクメーカーが生まれる可能性もあったのではないだろうか? それができない日本企業にとってマーケティングほど重要なエリアはないのかもしれない。「まっとうな企業の画期的なマーケティングが望まれているのではないか?」と感じさせられた。

■ 発売日
原書は2008年に発売された。日本での発売は、2013年10月28日。つまり、書評記載時は新刊書である。

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