組織本・リーダーシップ論本

失敗の本質とは何か|日本的組織が意思決定に失敗する理由

2013年9月8日

失敗の本質」とは、日本的な組織がなぜ意思決定に失敗し続けるのかを、旧日本軍の戦史分析から明らかにした組織論の名著である。

本書が示したのは、第二次世界大戦における日本の敗因が、単なるアメリカ軍との物量差ではなく、日本的な意思決定構造そのものにあったという事実である。そして、この論理性を欠いた戦略判断や、失敗から学ばない組織体質は、戦後の日本企業にも形を変えて残り続けてきた。

そのため「失敗の本質」は、戦史の分析にとどまらず、現代の日本企業や組織がなぜ意思決定を誤り続けるのかを考えるための必読書として、今なお読み継がれている。本記事では、「失敗の本質」が示した組織的失敗の構造と、現代のビジネスに通じる教訓を整理する。

失敗の本質が定義する「日本的組織の失敗」とは何か

日本的組織の失敗を「失敗の本質―日本軍の組織論的研究」では、
・感情的で戦略性に欠如した意思決定
・過剰な精神主義によるミスリード
・組織的な学習の欠如
と定義している。

戦争が終わりもう70年以上たつが、今も日本社会に幅広く残る過剰な精神主義。これを克服しないことには、21世紀型のイノベーションが重要な組織には脱皮できない。特にコロナ禍以降、より効率化が求められている今だからこそ、この「失敗の本質から日本的な組織の失敗を学び、次世代の日本的な組織を作るべきであろう。

失敗の本質とはどのような本か

日本的な意思決定や組織の暴走について、分析されている第二次世界大戦中の戦いは以下の6つである。どれもが、その戦いによって敗戦の色がどんどん濃くなったというターニングポイントの戦いである。

分析されている戦い:
ノモンハン事件
ミッドウェー作戦
ガダルカナル作戦
インパール作戦
レイテ海戦
沖縄戦

一般的には、これらの戦いは、シンプルに日本はアメリカとの物量差で負けたとしている。しかし、開戦当時は、アメリカ軍は圧倒的に負けていた。この経験から、組織的にもアメリカ軍は進化したのも一つの勝利の要因だ。日本軍は主要な戦いで敗れた後も、硬直した人事制度や跋扈する官僚主義を温存したまま組織を維持した。これにより、正しい意思決定ができない状態が固定化された。そして、この組織的な変化ができなかったことにより、戦略的な判断ミスを生み敗戦を決定づけてしまったのだ。

失敗の本質」の発行は1984年。皮肉にも日本が最も繁栄するバブル経済前夜である。ここからバブル景気が本格的に盛り上がっていく。

ジャパン・アズ・ナンバーワンと歌われたバブル経済下の日本企業は、一時的には世界的覇権を握った。このモーレツサラリーマンによるこの繁栄が続けばこの「失敗の本質」がここまでロングセラーになることはなかっただろう。

実際には、その後の、バブル経済の崩壊、IT革命、インターネットの勃興による、ハードウェアからソフトウェアのシフト下で、日本企業、日本経済は完全に輝きを失っていく。現在のスピードが重要となるグローバル経済下で多くのグローバル企業は、戦略的な選択と集中、創造的な破壊と業務革新(イノベーション)を行っているが、日本企業は常に中途半端のままで終わっている。

「失敗の本質」は1984年に出版された書籍であるが、今なお高い評価を受けている。その理由は、日本のビジネスシーンが今なお日本的な組織的失敗を克服できていないからであろう。

どうしたら勝てたのか、「戦略の本質 」の紹介

この失敗の本質を書いた著者が作った続編ともいえるのが「戦略の本質」というビジネス書だ。これは2005年に待望の続編として発売された。

この本では、当初は勝てない戦い、すなわち必ず負けるといわれていた戦いをどのようにして勝利につなげていったのかを描き出している。つまり「成功の本質」ともいえる本である。

分析されている戦い:
中国の内戦における国民党と共産主義勢力の戦い
バトル・オブ・ブリテン
スターリングラード攻防戦
朝鮮戦争
ベトナム戦争
第4次中東戦争

歴史を見れば勝者がわかっている。しかし、どの戦いも物量に劣っており、開戦当初は、勝てないといわれた戦いであり、戦争における転換点となった戦いである。その勝利の法則ともいえるものは、強いリーダーシップ高い戦略性による効果的な戦いで勝利していったことが解説されている。

失敗の本質とビジネスシーンを結ぶ一冊

戦争や歴史をそのままビジネスに活かすというのは実は難しい、というのも、戦争とビジネスは本質的に違うものである。そこで紹介するのが「超」入門 失敗の本質 である。

この本は、様々な企業戦略の実例と日本軍の失敗を対比し、どのようにしたら勝てるのかを解説した経営戦略本である。

この本は、日本を代表する大企業に所属したことがある人間ならば耳が痛い話ばかりだ。例えば、第2次世界大戦当時、アメリカ軍は勝てない提督や卑怯な司令官を即座に更迭したとのことだ。その一方で日本軍、日本企業にはお飾り人事が実に多い。このことは、現場でのイノベーションを活用する組織力を阻害していることは容易に想像できる。

この本は、日本人特有の文化の本でもある。日本人ビジネスパーソンは是非目を通してほしい。

「超」入門 失敗の本質では、日本人、日本的な組織には転換点で弱いとされている。今、まさにコロナ過で、日本社会は転換を問われている。この本を読んで、どうしたら転換点に強くなるのかは国家的な課題であろう。

とにかく、失敗の本質は、日本人、日本的組織、つまり、日本が上手くいかなくなった時に参照するべき国家的財産だ。ビジネスパーソンであれば、一度は目を通すべき書籍である。

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