経営戦略本

なぜ優良企業こそが衰退するのか - それがイノベーションのジレンマ

2013年9月3日

成功を収め、大きなマーケットシェアを持っている業界トップの優良企業。この企業が、保有するその優れた製品を継続的に改善すれば、その繁栄は永遠に続くと思われる。

しかし、優良企業ほど、破壊的な変化に敗れてしまう。「イノベーションのジレンマ」は、その答えが「経営の失敗」ではなく「正しい経営」を続けた結果であることを明らかにしたイノベーション本の古典である。

本書が示したのは、既存顧客と既存製品を重視する合理的な経営判断こそが、破壊的イノベーションへの対応を遅らせるというジレンマである。優良企業が衰退する構造を理解するうえで、今なお避けて通れないビジネス書の古典と言えよう。尚、これは非常に衝撃的である。なぜなら、失敗には失敗なりの理由があって当然だ。しかし、この本では、優良な企業が、高品質な製品を継続的に改良していっても市場から退場を迫られる可能性について言及しているからだ。

なぜ優良企業はイノベーションのジレンマに陥るのか

この「ジレンマ」とは、既存の商品の持続的イノベーションを継続的に行っていても、全く別の軸からその顧客にとって代替となり、コスト的にも安い「破壊的イノベーション」が起こった場合にそれに対して無力であるというのが語られている。

「破壊的イノベーション」の例として、もっともよく使われる例としては、オフコン時代(オフコンとは事務処理に特化した中型コンピューターの総称)に起こった、より汎用的なパソコンによる置き換えである。日本人にとっては、日本に数多くあったワープロ専用機(例えば、書院)をいかに進化させても、ワープロソフト+パソコンのセットという破壊的イノベーションには太刀打ちできないということである。

なぜ「正しい経営判断」が破壊的イノベーションを生むのか

最も重要なのは、優秀な企業が「優良な経営方針」と信じられている方法で経営を行うほど、破壊的イノベーションに弱くなる点である。言い換えれば、まっとうな経営を行う企業ほど、持続的イノベーションから抜け出せなくなる

企業という組織は、本質的に「反復して改善し、精度を高めていく」仕組みを持っている。優良企業ほどこの仕組みが効果的に機能しているため、既存事業を否定するような破壊的な試みが組織内部で排除されやすい。結果として、破壊的イノベーションが起こる土壌を自ら削いでしまうのである。

1997年の出版以来この「イノベーションのジレンマ」は、その衝撃的な内容から数多くのビジネスマン、特に大企業のエリートビジネスマン必読の書とされてきた。

クレイトン・クリステンセンとは何者か

このイノベーションのジレンマは、15年以上にもわたって読み続けられている大ベストセラーとなり、イノベーションといえば、クレイトン・クリステンセン氏といえる存在になった。

現在、ハーバード・ビジネス・スクールの教授を務めるクリステンセン氏は、教授の傍らイノベーションを中心のテーマに据えた戦略コンサルティング会社「Innosight」を経営している。尚、クリステンセン氏は、ハーバード・ビジネス・スクールの教授になる前には世界的な戦略コンサルティング会社、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)に勤務していた。

イノベーションのジレンマ以降の発展

また、この「イノベーションのジレンマ」の続編と言えるようなイノベーションに関する名著をクリステンセン氏は、いくつか出版している。

イノベーションのジレンマでは、破壊的イノベーションによって衰退する大企業に視点をおいての著書であったが、「イノベーションへの解 利益ある成長に向けて 」を出版し、今度は破壊的イノベーションを実施するサイドに焦点を当てた。そして、具体的に破壊的イノベーションを起こしたいと思考する人々に向けて「イノベーションへの解 実践編」も出版されている。

また、「イノベーションのDNA 破壊的イノベータの5つのスキル」では、イノベーションを起こすためのスキルを数々の起業家を通して分析し解説している。

とにかくイノベーションといえば、クリステンセン氏なのだ。その出世作である「イノベーションのジレンマ」は必読の名著といえるだろう。

発刊日と評価

この「イノベーションのジレンマ」は1997年にアメリカで発売された。原著は「The Innovator's Dilemma」であり、直訳すれば「イノベーターのジレンマ」となる。今から15年以上前の本であるが、今なお読み続けられている本である。本当の名著と読んでもいいだろう。大きな書店のビジネス書コーナーに行けば、必ず在庫がある一冊と言えるだろう。

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