マーケティングを学びたいと考えたとき、多くの人が「どのマーケティング本を読めばよいのか」で迷う。マーケティングには戦略、ポジショニング、価格、CRM、口コミ、データ活用など多くの領域があり、断片的な知識だけでは全体像をつかむことが難しい。
本記事では、マーケティング本の中でも長年読み継がれてきたロングセラーの名著を中心に、2020年代のビジネス環境にも通用する必読書を10冊厳選した。初心者が体系的に学ぶための入口としても、実務に活かすための再整理としても活用できる構成としている。
マーケティングの主要領域と全体像
マーケティングは単一の手法ではなく、複数の領域が相互に補完し合う体系的な分野である。
まずマーケティング戦略では、市場選定や競争優位の軸を定める。ポジショニング戦略は、顧客の認知の中で自社をどう位置づけるかを扱い、その戦略の中核となる。
プライシングは価値と価格の関係を設計する重要な意思決定であり、収益性に直結する。ダイレクトマーケティングやCRMは顧客との継続的関係を構築し、LTVを最大化する役割を担う。口コミマーケティングは他者の影響を活用し、信頼の連鎖を生み出す手法である。近年はデータドリブンマーケティングによって意思決定の精度が高まっている。
2020年代に入り新しいコンセプトも生まれた、これは、CEP(カテゴリー・エントリー・ポイント)を意識した記憶想起型のマーケティングが重視されている。
つまり、マーケティング本については何を読めばいいのか?というのは非常に悩むことにそこで「大切なことはビジネス書から学んだ」では、古典とも言えるロングセラーなマーケティング本を中心に、マーケティングを網羅的に学べる10冊を厳選した。
10冊のおすすめのマーケティング本、ベストセラー・必読の名著リスト
マーケティング全般を理解するための1冊
1. 古典といえる網羅的なマーケティング本 1冊
各マーケティング領域を理解する9冊
2. ポジショニング戦略を理解するためのマーケティング本 2冊
3. プライシング戦略(価格戦略)を理解するためのマーケティング本 1冊
4. ダイレクトマーケティングを理解するためのマーケティング本 2冊
5. CRM(顧客接点)を理解するためのマーケティング本 1冊
6. 口コミ・マーケティングを理解するためのマーケティング本 1冊
7. データドリブン・マーケティングを理解するためのマーケティング本 1冊
8. 2020年代のヒットコンセプト:CEPを理解するためのマーケティング本 1冊
マーケティング全般を理解するために
マーケティングというのは非常に領域が広いテーマだ。そこで、特定のマーケティング施策についてのビジネス書を読む前にまずは、マーケティングを網羅的につかむ古典的なマーケティング本を読むべきだ。
1. 古典といえる網羅的なマーケティング戦略本 1冊
コトラーのマーケティング・コンセプト
著者:フィリップ・コトラー / 初版:2003年
原著:Marketing Insights from A to Z: 80 Concepts Every Manager Needs to Know
マーケティング界のグル中のグルと言ってもいいノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院(ビジネススクール)の教授、フィリップ・コトラー氏によるマーケティングの基礎を学べる本。
コトラー氏と言えば、大著「コトラーのマーケティング・マネジメント」が有名である。しかし、一般人が読むにはあまりにも大著すぎるマーケティング本である。
当書は、マーケティングに関して重要だと考えられる80のコンセプトをテーマごとに解説している。1コンセプトごとに完結しているため、「コトラーのマーケティング・コンセプト」は、非常に取り組みやすいマーケティング本と言えるあろう。
各マーケティング領域を理解するために
マーケティングの各領域を理解するためには、それぞれの専門書を読むべきだ。
2. ポジショニング戦略を理解するためのマーケティング本 2冊
ポジショニング戦略
著者:アル・ライズ / ジャック・トラウト / 初版:1981年
原著:Positioning - The Battle for Your Mind
ポジショニングの概念を広めた本書。ポジショニングを一言で言えば「商品そのものに手を加えるわけではない。消費者の頭の中に、商品を位置づける(ポジショニング)のだ。」(本書、新版 P12より)と定義づける。
本書の中では、ポジショニングの手法だけでなく、このポジショニングにより、消費者のブランドに関しての認知、認識を大幅に改善した事例などが豊富に紹介されている。
「ポジショニング戦略」は、30年以上に前に発行された本書であるが、移り変わりや流行の激しいマーケティングという業界で、推薦できるおすすめの名著、ロングセラーのマーケティング本と言えるだろう。
ザグを探せ! 最強のブランドをつくるために
著者:マーティ・ニューマイヤー / 初版:2006年
原著:Zag: The Number One Strategy of High-Performance Brands
競合とは全く違う方向へ進み、それをブランド化しようと主張する本書。重要なことは「違い」なのである。そして、この違いをどのように構築するか?が詰まっているマーケティング本だ。
3. プライシング戦略(価格戦略)を理解するためのマーケティング本 1冊
値段ひとつで儲かるカラクリ
著者:ラフィ モハメド / 初版:2005年
原著:The Art of Pricing: How to Find the Hidden Profits to Grow Your Business
企業の利益に直結する価格、だたし、結構難しい、価格戦略(値付け)について解説した本書。
この「値段ひとつで儲かるカラクリ」は、顧客の感じる価値に注目しての価格付けについて学ぶことができる、価格戦略の名著ともいえるマーケティング本だ。
4. ダイレクトマーケティングを理解するためのマーケティング本 2冊
究極のセールスレター シンプルだけど、一生役に立つ!お客様の心をわしづかみにするためのバイブル
著者:ダン・ケネディ / 初版 1991年
原著:The Ultimate Sales Letter: Boost Your Sales with Powerful Sales Letters, Based on Madison Avenue Techniques
アメリカのダイレクトマーケティング業界のグルともいえる、ダン・ケネディ氏による著書。タイトルは、セールスレターとなっているが、インターネットも含めてレスポンスマーケティングに関わっているすべての人におすすめの書籍である。
本書では、28のステップに分けてセールスレターの作成について解説している。具体的なコピーの書き方から、デザイン面でのアドバイス、テストの重要性なども述べられている。
本書の中には、セールスレターのサンプルも含まれており、これを参考しながらレスポンスマーケティングを組み立てることもできる。インターネット時代になり、顧客到達のためにチャンネルが変わっても結局受け取るのは人であり、それは変わってない。
消費者心理を知り尽くした著者ならではのテクニックが学べるおすすめの名著である。
シュガーマンのマーケティング30の法則 お客がモノを買ってしまう心理的トリガーとは
著者:ジョセフ・シュガーマン / 初版:1999年
原著:Triggers: 30 Sales Tools you can use to Control the Mind of your Prospect to Motivate, Influence and Persuade.
「心理トリガー」つまり顧客が購入してしまう引き金の重要性と、それについての消費者心理を解説しているのが当書(ちなみに、原著のメインタイトルは、トリガーである)。
著者は、実際にダイレクトマーケティングで大成功をおさめたジョセフ・シュガーマン氏である。ダイレクト・マーケティング、レスポンス・マーケティングに携わる人だけでなく、すべての顧客接点を持つ人におすすめの本と言える。心理トリガーについて詳しく知りたい人はこちらの書評を参考にしてほしい。
5. CRM(顧客接点)を理解するためのマーケティング本 1冊
パーミッション・マーケティング
著者:セス・ゴーディン / 初版:1999年
原著:Permission Marketing : Turning Strangers Into Friends And Friends Into Customers
インターネット誕生からさまざまなマーケティングコンセプトが生まれたが、その中でももっとも有名なものの1つに「パーミッション・マーケティング」がある。
パーミッション・マーケティングとは、消費者に情報を提示してもらう許可、それに対してよりニーズに合った情報を送り、それによって、より多くの情報を消費者に開示してもらい許可を得る、というような長期間なインタラクションを通じて、見込み客から顧客に転換することを言い表した言葉だろう。
新しい時代を作った1つのおすすめのマーケティング本といえるであろう。このパーミッション・マーケティングの書評はこちらから。
6. 口コミ・マーケティングを理解するためのマーケティング本 1冊
クチコミはこうしてつくられる―おもしろさが伝染するバズ・マーケティング
著者:エマニュエル・ローゼン / 初版:2000年
原著:The Anatomy of Buzz: How to Create Word of Mouth Marketing
口コミが発生する状況に対して、体系立てて説明するのが当書である。
そもそも人々が前向きなコメントを残すに値する商品を持っている必要や口コミを起こすために誠実、正直、素直に口コミマーケティングを行っているかなど、小手先にはよらないまっとうなことも論じている。
この本を読めば、口コミは単なる偶然の産物ではなく、活用できるマーケティング手法であるということがわかるマーケティング本である。この「口コミはこうしてつくられる」の書評はこちらから。
7. データドリブン・マーケティングを理解するためのマーケティング本 1冊
統計学が最強の学問である
著者:西内 啓 / 初版: 2013年
純粋には統計に関するの本かもしれないが、マーケティング本と言っても言いだろう。データに弱いマーケッターには耳の痛い話がたくさん乗っている。
データを集め、集計だけ行い、それを奇麗なグラフでまとめる。そして、キャンペーンがうまくいったという雰囲気を出した資料を作る。しかし、突っ込まれればそのデータが持つ本当の意味について曖昧ということはないだろうか?データの力をどのようにしてマーケティングに活かしていけばいいのか?の方向性をこの本は教えてくれる。
8. 2020年代のヒットコンセプト:CEPを理解するためのマーケティング本 1冊
“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?
著者:芹澤 連 / 初版: 2022年
“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか? は、CEP(カテゴリー・エントリー・ポイント)の考え方を「未顧客」という視点から解説した一冊である。
本書は、企業が既存顧客やロイヤルティばかりに注目しがちな理由を問い直し、成長の本質は「まだ買っていない人」に想起される確率を高めることにあると論じる。人は大半の時間、購買していない未顧客であり、重要なのは購入直前の説得ではなく、特定の状況や欲求が生じた瞬間にブランドを思い出してもらうことだという主張は、CEPの核心と一致する。日本語でCEPを実務視点から理解できる貴重な書籍である。
まとめ:おすすめのマーケティング関連のビジネス書
マーケティングは、単一の理論や手法で完結する分野ではない。戦略設計、ポジショニング、価格、顧客との関係構築、口コミ、データ活用など、複数の領域が相互に関係し合いながら成立している。そのため、マーケティングを学ぶ際には、流行の施策や断片的なノウハウに飛びつくのではなく、全体像を理解したうえで各領域を段階的に深めていくことが重要である。
本記事で紹介した10冊は、長年読み継がれてきた古典的名著を中心に、現代のビジネス環境にも通用する考え方を学べる書籍を厳選したものである。いずれも一過性のテクニックではなく、マーケティングを構造的に捉える視点を与えてくれる点に共通点がある。
まずは全体像を把握できる書籍から入り、その後、自身の関心や業務に応じて各領域の専門書を読み進めていくことで、マーケティングへの理解はより立体的なものになるだろう。本記事が、マーケティングを体系的に学ぶための出発点として役立てば幸いである。