「ゾーンに入る」という言葉がある。非常に生産性が高く、はまっている状態だ。
スポーツをしている人ならば、ゾーンに入ればいままでの練習で必ず失敗していたプレーができるであろうし、プログラマーであれば、非常に高度な技術的な課題を解決することができる。
ブレークスルーを産む為には、何よりもこのゾーンに入る必要がる。
このゾーンと呼ばれるものを学術的に、しかし、わかりやすく解説したのが、「フロー体験 喜びの現象学」である。
本書のP95ページには、どのようにして人がフロー体験に入るかテニスを練習する少年、アレックスを用いて解説している。
「能力と挑戦」の2軸の中で、挑戦の度合いを高めると不安が起こり、能力が高まると退屈する領域が広がっていく。能力と挑戦が非常にバランスが取れた状況で、フローチャンネルが存在し、その領域で人はフロー体験を感じられる。
退屈と不安はともに望ましい経験ではないから、アレックスはフローの状態に戻るように動機づけられる。どうすればよいのか。図を一瞥すれば、もし彼が退屈しており、再びフローに入ることを望んでいるなら、アレックスは基本的にただ一つの選択しかないことが分かる。つまり、彼が立ち向かう挑戦の水準を上げることである
(本書P95より)
そして、この例だけでなく、本書では様々な状況をに応じてフロー体験に入る為の方策を論じている。
この本の最大の特徴は、フロー体験にに入る為の方策を詳しく学術的に裏打ちされた視点で詳しく解説している点である。
巻末には膨大な注と参考文献リストが列挙されているように、簡単にさらっとかかれた本ではない。だからこそ、非常に抽象的な表現になりがちなフロー体験を納得間ある形で理解できる。自己啓発の伝統的な良書といえるだろう。
◼︎ 発売日
「フロー体験 喜びの現象学」の原書、Flow: The Psychology of Optimal Experienceは、1990年に発売された。著者のM. チクセントミハイは、出版当時、シカゴ大学心理学科、教育学科教授であった。
氏は、このフロー体験に関する第1人者であり、当書も日本では、心理学的観点からだけでなく、自己啓発的観点からも名著として知られているといえるのではないか。
オススメである。