ビジネス教養書

人間はAIに仕事を奪われるのか?

昨今まことしやかに騒がれるAIが人間の仕事を奪うのか?という議題がある。AIによってなくなる仕事があるのは事実だろう。ただ、AIが人間の仕事のすべての領域を奪うわけではないだろう。

具体的にAIがどんな仕事を奪うのか?逆にどんな仕事を奪わないのか?を考えていきたい。

AIが仕事を奪っている領域はどこか?

産業用ロボットに奪われた工場労働者の仕事

歴史的に、人間の仕事が機械に奪われたという意味では、工場の生産ラインがあげられる。工場のある特定の作業を代替する産業用ロボットが導入されたことにより、人間の組立工の仕事が奪われたのだ。

1970年代中盤から始まったこの動きは、1980年代に加速し、今では当たり前になった。そして、現在もロボット導入が進められており、工場労働者の仕事は奪われ続けている。

現在、このようなロボットにも AI の技術を応用することで様々な作業をこなせるようになっているが、現在、AIが人間の仕事を奪うという意味で危機感がある領域は、この産業用ロボットが対象としている領域(ブルーカラー)ではない。このブルーカラーの領域は織り込み済みということだ。

どこかといえば、ホワイトカラー(オフィスで働いている人)領域である。

ホワイトカラーの仕事を奪うAI

今、現在、さまざまなホワイトカラーの業務があるが、この業務の一部をAIが取って変わる状況が生まれてきている。ここが、AIに仕事を奪われるという文脈の主領域だ

例えば、顧客対応業務では、現在でも、AIを搭載したチャットボットや音声応答システムが、1次的な顧客対応を行っている。難しい業務は、人間が対応するものの、定番の問い合わせにはAIが回答し、人的リソースを削減することに役立っている言い換えれば、人間の仕事を奪っている。

また、不審者の監視などの業務でも、AIを使った画像認識システムにより不審者候補を割り出し、それを人間がチェックするなど、人的リソースを削減することに役立っている。

また、手書きの申込書などの読み取りは、AIを使ったOCRシステムによりその精度が上がり、ますます、人手を介さなくてよくなった。

それだけではない、AIのアルゴリズムの発展により、営業現場における売れそうな顧客の特定など、今まで、知識と経験を持った中間管理職が行ってきた業務までAIにとって代わってきている

例えば、アメリカで大人気のタクシーシステムであるUberでは、運転は人間が行っているが、車の配車はAIが行っている。つまり、運転手に指示を出しているのはAIということになり、上司がAIであるということ同義だ。

このようにAIによるホワイトカラーの仕事の領域の浸食は始まっている。つまり、AIに奪われにくい仕事に就くというのが賢い選択といえよう。

最終的にAIに奪われない仕事はなんであるのか?

理解しておきたい汎用的AIと特化型AI

皆さんが関心があるのは、具体的にAIに仕事が奪われない領域はどこなのか?ということであろう。それを理解するためには、汎用型AIと特化型AIを理解しておかないといけない。

汎用型AIとは、簡単に言えば、スターウォーズに出てくる3-CPOである。あの金ピカのマシンである。人間の指示を受けて自律的に動き、その経験をもとに進化していくAIである。このような汎用型AIが出現すると、人間の仕事の大きな部分で奪われるかもしれない。

ただし、現在のテクノロジーではこのような自律的なAIを作り出すのは非常に難しい。現在のAIは、特化型といわれる人間が事前に定義した仕事を行うAIのみが実用化している。このような特化型のAIは、人間による教育がないと自律的に進化していくことは難しい。

マニュアル化できない仕事こそがAIに奪われない仕事

つまり、AIに奪われない仕事というのは、この特化型AIができない仕事、つまり、事前に、ルール化やマニュアル化できない仕事となる。

とある職種がAIによって消滅するというよりも、その職種の中の一部の仕事がなくなる?

例えば、弁護士という非常に高度な仕事を例にして考えてみる。この弁護士の中でも、世の中で、何度も同じような契約が行われているもの(例えば、ビジネスに終える守秘義務契約書のレビュー)といったものは、AIにとって代わるかもしれない。なぜなら、このような定型業務に近いものはマニュアル化することが可能だからだ。

その一方で、同じ弁護士の仕事を考えてみても、AIの法的規制を考えるといった、全く新しい領域の業務については、前例もなくマニュアル化できないため、このような業務は人間に残り続ける

判断がアルゴリズムで済む仕事はなくなる?

タクシー配車アプリであるUberが奪った仕事は、タクシーの配車が係の仕事だ。現在、タクシーは自動運転されておらず、全自動、つまり、AIが運転する車ができるまでは、法的な問題もありしばらく時間がかかるとされている。

このような中間管理職的な仕事、例えば、営業マネジャーのような仕事は、AIにとって代わられるかもしれない。営業マンは、モノを売るために様々な複雑な判断をしているが、その営業マンに対して、この顧客が売れそうだというような支持は、AIにとって代わるかもしれないということだ。

AIの時代になっても奪われない仕事とは

AIは業務の直接的な大量のデータを元に繰り返し行う業務が得意である。

逆に、その業務に直接的な大量なデータがない新しい領域業務が繰り返しでなくイレギュラーなパターンがたくさんある業務はAIは不得意であり、そのような業務は、AIの時代になってもその仕事は奪われないといえるのではないか?

参考図書

Uberland ウーバーランド  - アルゴリズムはいかに働き方を変えているか -
著者:アレックス・ローゼンブラット
人間の上司がAIとなった初めての大規模な組織、Uber の仕組みを解き明かしたビジネス書。今後のAI型組織の考える上で役に立つ。

予測マシンの世紀: AIが駆動する新たな経済
著者:アジェイ アグラワル、ジョシュア ガンズ、アヴィ ゴールドファーブ
AIのビジネス利用について解き明かしたビジネス書。AIの限界と可能性がわかる。

新エクセレント・カンパニー: AIに勝てる組織の条件
著者:トム・ピーターズ
著名な経営コンサルタントのトム・ピーターズによる新著。AIにはまねできない「エクセレント」な企業活動やビジネスパーソンはどんなものかを解説している。

 

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