ビジネス教養書

iモード事件 - 成功体験を体感する

20世紀最後の大ヒットとも言えるのが、iモード。このiモードの誕生を秘話を綴ったのがこのiモード事件である。

筆者は、このiモードの生みの親である松永真理氏。日本を代表する大企業集団NTTの携帯電話事業会社、NTTドコモでどのようにして、iモードというイノベーションが起こったかを当時参加したメンバーの実名、バックグランドを含めて細かく書かれている。

この本は、成功者が自身のポリシーを語る本ではなく、iモード誕生の舞台裏を描いたノンフィクション本というべきもので、そういった意味では純粋なビジネス書には当たらないかもれない。

松永氏は、リクルートから携帯電話上のコンテンツビジネスを立ち上げるためにNTTドコモに転職、官僚的な会社な雰囲気の中で、外部から来た人間として奮闘する。そんな松永女史は、その後、日本のIT業界のリーダー的な存在とも言える夏野剛氏を呼び寄せ、この二人がサービス開発の中心が、いわば”外人部隊”として新サービス開発を引っ張ることになる。

現在は、日本のIT業界のリーダーとも言えるこの夏野氏は、このNTTドコモに加わる前は社長失格―ぼくの会社がつぶれた理由(板倉 雄一郎著)という本で有名な一時期は大きな注目を集めたものの破綻したベンチャー企業ハイパーネットの副社長を務めていた。自身の著書以外の本として、破綻の告白本(1998年11月発売)と大成功本の告白本(2000年7月)とこんなに短期間に名前を連ねた人も少ないだろう。成功→破綻という方向は多いが、破綻→成功というのはなかなかいない。

凄腕の人物なんだろう。

さて、そんな夏野氏と松永女史の会話も面白いし、著名な外資系コンサルティング会社との議論も面白い。ただ、一番の注目は若手の笹川さんだろう。具体的には書かれていないが、御曹司の笹川さんといえば、あの笹川一族の笹川さんだろう。NTTドコモで働く必要があるのだろうか?と思うほど、御曹司っぷりを発揮していく。御曹司ながら努力がサービス加速する。庶民の私は御曹司に対しては大きなやっかみがあるが、気持ちいいほどの御曹司はすごいなと思ってしまう。

そして、最後に、最も興味深いのが、この2人を呼ぶという決断をし、NTTドコモの体制側と調整役として働くゲートウェイビジネス部長当時)の榎啓一氏。榎啓一氏の体制側と外国人部隊の調整がこのiモードの成功の大きな要因であることは間違いないだろう。

榎啓一氏がいなければ外国人部隊も浮かばれない存在だったのではないか?

当時、NTTドコモの本流にはそれほどあまり期待をされていなかったというiモードビジネス。今もって、おサイフケータイとともに、NTTドコモ史上最大のヒットである。すっかり、元気がなくなった今の日本の携帯業界であるが、当時は、このiモードは世界のモバイル通信サービスのお手本として注目を浴びていたのである。

NTTドコモという大企業が起こしたイノベーション、iモード、その舞台裏を明かしたiモード事件は、是非とも大きな企業に勤めている人に読んで欲しい本だ。あなたも出来るかもしれない。そして、優良企業からの破壊的イノベーションが難しいとするイノベーションのジレンマを合わせて読むことをおすすめする。

■ 発行日
2000年7月発売。

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