数多くの企業経営戦略本が出版されているが、この経営は「実行」は異色の本ともいえる。
というのも、この本は、経営戦略そのものについては、あまり語っていない。この本は、その経営戦略をどのように実行していくべきかについて語っているからだ。
戦略よりもとにかく実行が重要
この経営は「実行」では、コンパックやゼロックスなどのケースを取り上げて、多くの企業で経営戦略は的確に設定されたが、その戦略を現実化できずに失敗したとしている。いわば実行力不足だった問いことだ。
そのことからも、CEO(社長)は、戦略的に考え、ビジョンを示すだけではなく、実際には、企業内の組織にどっぷりとつかって組織的な実行を促進することが重要としている。
今までは、こまごまとした実行は部下に任せることが良いCEOの条件と考えていた人も多いだろう。しかし、本書では、実行レベルまでCEOがサポートすべきだとしている。
企業経営者は、各部門のリーダーを選抜し、戦略的方向を定め、業務を遂行するという3つのプロセスを主導することによって、実行に責任を持たなければならない。(本書P64より)
このようにこの経営は「実行」では、
・人材面
・戦略面
・業務面
の3つの要素に分けて、どのように企業戦略を実行していくべきかを解説している。
実戦に基づいた経営戦略書、それが、経営は「実行」
尚、本書の2人による共著であり、そのうちの1人は、ノースウェスタン大学の教授のラム・チャラン氏である。そして、もう一人は、アメリカで超有名な大手企業を実際に経営してきた、ラリー・ボシディ氏である。
ラリー・ボシディ氏は、アメリカ最強のコングロマリットであるGEに勤務し、その後、ハネウェル・インターナショナルのCEOを務めた。
その大企業のCEO、つまり、大きな組織を率いてきた人が、経営はビジョンでなくて、実行だといっているのである。説得感はますます高まるだろう。
ハネウェル・インターナショナルとは
日本では、ハネウェル社と聞いてぴんと来ない人も多いと思う。その理由は、ハネウェル社の商品の本とんどが、一般消費者向けに商品を製造している会社に納品する機器であるからだろう。
つまり、ハネウェル社は、日本で言えば、村田製作所やデンソーといった企業とも近いかもしれない。その製品は、日常生活において重要であるが、一般的に目にするところには出てないということだ。
ちなみにこのハネウェル社が、どんだけ巨大であるかというと、2019年会計年度の売上は、約4兆円 (3.7ビリオンUSD)。フォーチュン100企業の1社であり、全世界に約11万人の従業員を抱える。ハネウェル社の設立年度はなんと1906年。今から100年以上前に設立された大企業である。
戦略よりもとにかくやることが重要。これが、大企業のCEOが言っていることなのである。是非とも、読んでほしいビジネス経営書だ。