経営戦略本は数多くある。経営戦略もいろいろとある、バリュー・チェーン(競争優位の戦略)、ファイブフォース(競争の戦略)、リエンジニアリング革命、コア・コンピタンス、最近では、ブルー・オーシャン、リバース・イノベーションなどなど、経営戦略というものを様々なものがある。
それぞれの戦略はそのビジネス書を読めば理解が出来る。ただ、その戦略が生まれた歴史的な背景や、各戦略同士の相互関係などは凡人には想像もつかない。その為、経営戦略書を沢山読むと自分の頭のなかで「バラバラ感」が生まれてしまい解消できない人もいるのではないか?
今回紹介する「経営戦略全史」は、上記で紹介したメジャーな戦略の解説だけでなく、それぞれの相関関係を明らかにした経営戦略本の名著である。
筆者によれば、
「60年代に始まったポジショニング派が80年代までは圧倒的で、それ以降はケイパビリティ(組織・ヒト・プロセスなど)派が優勢」(本書P5)
ポジショニング派は「外部環境がダイジ。儲かる市場で儲かる立場を占めれば勝てる」と断じ、ケイパビリティ派は「内部環境がダイジ。自社の強みがあるところで戦えば勝てる」と論じました。(本書P6)
というのが経営戦略の大きな流れだそうだ。
この説明を聞くと、ポジショニング派の大家であるマイケル・ポーター氏が80年代に出版した名著「競争の戦略」、「競争優位の戦略」、そして、同じくやはり80年代の大ヒットであり、ケイパビリティ派の「エクセレント・カンパニー 」(トム・ピーターズ氏著)の存在意義を強く感じてしまうのは私だけであろうか?
そして、21世紀に入り経営スピードが速くなり、変化に富む時代になってくると、この2つの戦略は陳腐化し、アダプティブ戦略が台頭してきたそうだ。これは
「やってみなくちゃわからあない。どんなポジショニングでどのケイパビリティで戦うべきなのか、ちゃっちゃと試行錯誤して決めよう」(本書P8)
というものである。これを聞いて一番思いうかぶ本は「リーン・スタートアップ」であろう。
いずれにしても、この「経営戦略全史」は経営戦略を学びたい人には最適な入門書と言えるであろう。それだけでなく、ビジネス書好きにも、今までの経営戦略本の知識を再構築できる名著といえるだろう。オススメである。
イラストや太文字なども多用し、デザイン的にも面白く非常に読みやすい本になっている。一点だけ残念なのは、なぜかページ番号がページ中央部に表記されており、装丁の関係から若干見にくいことを述べさせていただきたい。
■ 発売日
2013年に出版された。筆者の三谷宏治氏は、ボストンコンサルティンググループやアクセンチュアで戦略コンサルタントとして活躍し、現在は、MBAスクールで教鞭を取っている。
非常に面白くおすすめの本である。