「サザエさん症候群」という言葉がある。これは、サラリーマンが、日曜日の6時半から放送される人気アニメ「サザエさん」が始まると、月曜日からの仕事を思いだし憂鬱になってしまうという心理状態を語ったものだ。「週末は楽しい、仕事はつまらない」という典型的なサラリーマンの心情であろう。
あなたはこれについてどう思っているか?
・「仕事はつまらないもの」と割り切ってしまっている
・「どうせ8時間働かないと生きていけないのでできれば仕事を楽しくしたい」と希望を持っている
のどちらかだと思うが、後者の人は少ないのではないか。「仕事はつまらない」と日本中のサラリーマンがあきらめているのが現実ではないか。
もし、「仕事内容は全く同じでも、仕事を楽しくすることができる」としたらそんなに楽しいことはないだろう。それが可能だと主張するのが本書「なぜCEOの転進先が小さなレストランだったのか ―マネジメントを極めた男の物語」である。
尚最初に断わっておくが、この本は、組織論の本である。つまり、自分自身の仕事の対する姿勢しだいで仕事が楽しくなるという本ではない。マネージャー層向けに書かれた組織論のビジネス書籍である。
この本では、マネージャーが変わればそのチームのだれもが、「サザエさん症候群」にならなくて済むのだという話だ。そして、それは簡単に実現できると著者のはこの本で語っている。なお、マネージャーではない人もここであきらめずにこの記事を問い急ぎ読み進めていってほしい。
「なぜCEOの転進先が小さなレストランだったのか」は、ビジネス小説の形を取っており非常に読みやすい。ストーリーは、たたき上げのタイプの主人公が、CEOとして自分が育て上げたフィットネスメーカーを他社に売却するところから始まる。
売却後、リタイア生活の中で時間を持て余す中、利用したサービス悪いイタリアンレストランの共同オーナーとなり、そのレストランを立て直すところがメインストーリーだ。一癖もある従業員にやる気を与え、活気ある店にしていく、そんなストーリーの中でどのように仕事を面白くしてやる気を起こさせるかの秘訣を教えてくれる。
著者、パトリック・レオンシオーニ氏によるとその解決への秘訣は、以下の3つのポイントの解消だという。それは、
・匿名性 自分という個人が理解されない
・無関係 自分の仕事が誰かにとって重要だということを知らない
・無評価 自分の貢献度や成長が把握できない
ということだ。
他のパトリック・レオンシオーニ氏の本と同じく、著書の巻末に解説がある。ビジネス小説だけでなく、この解説があるから、すらっと読んでわかったうえで、内容もよく理解できる。ビジネス書としては良書だ。
もし、あなたがマネージャーで「部下は仕事がつまらないだろうなぁ」と考えているならば、この本を読み改善するのも一策である。読者がマネージャーではない場合は、マネージャーへこの3つキーポイントを話すことを推薦している。
■ 発売日
原著は、2007年に発売された。タイトルは、「The Three Signs of a Miserable Job: A Fable for Managers (And Their Employees) <」であり、訳すれば、「惨めな仕事の3つのサイン:マネジャー(とそのスタッフ)向けたビジネス小説」ということになるだろう。
著者は、組織改善とチームの強化育成を専門とする経営コンサルティング会社「テーブル・グループ」社長である、パトリック・レオンシオーニ。氏はアメリカで大ベストセラーの「あなたのチームは、機能してますか?」など、ビジネス小説の形をとった組織、チーム作りのさまざまな著作がある。